ソフトバンク株主総会

ソフトバンクの定時株主総会が22日、東京都千代田区の東京国際フォーラムで始まった。最終利益がKDDIを上回るなど好調な業績を背景に、再生可能エネルギー事業への参入など次々に新しい事業に乗り出す孫正義社長の発言に注目が集まる。 《2011年度決算で、7期連続で営業利益が最高益を更新。最終利益で初めてKDDIを逆転したことなどの業績や、プラチナバンドと呼ばれる携帯電話の電波がつながりやすくなる900メガヘルツの電波帯を確保したことなどがビデオで説明された。続いて、これまでの実績や今後の事業について、孫正義社長が説明をしようとすると、株主が突然、マイク無しで発言し始めた。孫社長は苦笑いしながら、説明を開始した》 孫社長「2001年にブロードバンドを始め、先行投資で大赤字になった。これほど重いものかと痛感した。赤字が回復して黒字に転換した直後の06年にボーダフォンジャパンを買収し、携帯電話事業に参入した。08年にはiPhone(アイフォーン)を発売。その翌月にリーマンショックがあった。ソフトバンクは大変な危機だと指摘された。 なんとか乗り切り、業績を伸ばし、昨秋には独占していたアイフォーンがKDDIからも発売されると発表され、携帯事業参入以来の最大の危機だということで、社員一丸で取り組んだ。結果、アイフォーンの発売は我々が圧倒的なシェアで、KDDIを大きく上回った。振り返ると、数々の苦難があった。しかし、苦難は欠かすことのできない試練だったのではと思います」《スクリーンに、3という数字が表示された》 「この3はなんでしょうか。売上高が3兆円を超えたということです。豆腐屋さんは1丁2丁と毎朝、言っています。我々も『兆』で話ができるようにするぞと、社員が2人しかいないときから大ぼらを吹いてきました」 《続いて2が表示された》 「ボーダフォンジャパン買収に2兆円を使い、ユーザー数を2倍に伸ばしました。ボーダフォンは毎月純増数は横ばいという状況でした。買収し、ほとんど毎月、5年連続で純増ナンバーワンを続けました。当時は、ソフトバンクはドコモやKDDIの草刈り場になると言われていました。毎月がお客の獲得合戦という思いでがんばってきました」 《続いて、ウィルコム買収の経緯を説明する》 「ウィルコムが倒産しました。どこの会社も救済しないと言うことでしたが、我々に相談があり、役員会で「なぜ火中の栗を拾うのか」と言われ、激しい議論を行いましたが、10年12月に買収しまして、毎月黒字になっています。優秀な社員も多く、学ぶところも多いです。特別ボーナスも出しました」 《さらに、1が表示された》「1はなにかというのをひもときます。営業利益、7期連続最高益ということで、ヤフーBBを始めて大赤字になったときを考えると、夢のようです。ボーダフォンは毎年営業利益が下がり、投資家から『なぜ沈みゆく船を買収しに行くのか。携帯事業は日本では成熟産業だ』と言われ、株価は6割も下がるということを体験しました。しかし、我々で一丸となってがんばり、携帯はネットを使うためにあるという時代がくると宣言し、結果、スマートフォン、これはまさにネットをどこでも使えるようになり、まさに我々の本業になるということで取り組み、6倍の営業利益までV字回復しました。国内企業で4位の営業利益になりました。ということで1は何を意味するか。16年度に連結営業利益で1兆円を出すということを公言しました。1という数字、もう一つさらなる目標を申し上げます。そこからさらに伸ばして、国内の全ての事業会社で1位の営業利益を目指します。1兆円以上を出してるところはNTTさんだけです。1兆円の営業利益を出すだけでなく、すべての会社を抜いて、1番営業利益を稼ぎたい」 《さらに269120という数字が表示された》 「これは、株主の皆さんの数です。業績も上がったり下がったりして、株価も乱高下しました。志に向かって突き進んでいけるのも、志をわかちあい、リスクを取っていただいてる株主のおかげです。株主価値を最大化へということで、株主の皆さんに喜んでいただける経営をしていきたいと思います」 《続いて、毎年言われる代表的な質問「配当が少ない」などに答えていく》《スライドを使った説明が続く》 孫社長「今回、純有利子負債半減目標も突破できた。増配を前倒しし、本当は20円くらいの配当にしようと心の中で思っていたが、2014年度目標を前倒しし、今日、皆さんに認めてもらえれば増配しようと決めた。これが今日の唯一の議案です」 《スライドが切り替わる》 「多くの純有利子負債をゼロにする。これは結構だが、ただまっしぐらに進んで成長を阻害することが多くの株主が望むことなのかと、多くの方から質問があった。06年から比べ約2兆円返済し、純有利子負債は0.5兆円になり、ピーク時の5分の1になった。このまま行けばゼロにすることは十分できるめどは立った。 ここであえて、公言していた内容を転換する。従来の純有利子負債ゼロに注力する方針から、むしろ、適正なレベルを保ち、先ほどから申し上げてる配当を増やすことでできるだけ株主還元しながら、成長戦略を加速させるという、3つのバランスを取る方が、ソフトバンクらしいのではないかと考え、方向転換します」「また、質問として挙がっていたが、今後の成長戦略を聞かせてほしいということでした」 《過去の映像が流れる。孫社長が「利益で1兆、2兆と数える規模になりたい」と語る》 「満面の笑みで、利益で1兆、2兆と言いましたが、これは2004年の株主総会の時に、この部屋で言ったことです。あのときは1070億円の当期純利益赤字、当社の一番のどん底で創業以来の大赤字を出したときに言ったことです。脳天気にもほどがあると(笑)。しかし内心、見とれ、かならずやるからと、心の中では思っていた。だから満面の笑みで、本音を言えたわけです。「ホラだと思って聞いてください」と言っていた話を、明確に期限付きで、今日、公言しているわけです。これができなかったらペテンはげと(会場大爆笑)。 今回は、ホラだと思って聞いてくださいという前置きは無しです。営業利益1兆円超えの企業は世界43社しかないが、その中で1位になりたい。これが単なるホラではない、具体的な戦術、われわれなりにつめてやっているという一端をご説明したい」 《営業利益1兆円達成イメージがグラフで示される》「2011年度の営業利益の内訳を示します。モバイルの通信インフラ、固定の通信インフラ、コンテンツビジネスのヤフーの3つがありますが、この中で、一番の柱がモバイルです。われわれのモバイルはがどれくらい伸びるかというと、世界の名だたるモバイル会社の中で一番売り上げを伸ばしているのがソフトバンクです。日本国内が伸ばしているかというとそうではなく、ドコモさん、auさんは下げています。また営業利益の増加率も、ソフトバンクが1位です。その鍵になるのはデータ収入を伸ばすことですが、1ユーザー当たりの収入増加率の1番乗りがソフトバンクです。 過去5年を振り返ると、売り上げのほとんど全部がデータ収入の伸び(24%増)でした。携帯はインターネットをするために使うモノ、という時代が来ると考えていたが、今となれば、データ収入の増加という形につながっています」 「さらに伸ばすために3つの戦略がある。顧客基盤の増大、そのためににはネットワークの強化、また、スマホコンテンツの強化がある。スマホにあらずんば携帯にあらず、そう私は思っています。それをスマホを持っていないお客さまに言うのはおかしいといわれるが、それは私の本音です」 《スライドによる説明が続く》 「スマホが普及して使用頻度が減ったモノ、電話、カメラ、時計、パソコン、地図。私は腕に時計をしなくなったし、紙の地図を使わなくなり、iPhoneが出たその日からパソコンのキーボードを触らないと心に堅く思い、実際に使っていない」 「今、100万種類を超えるアプリケーションが入っている。今、日本人の1日当たりのメディア使用時間も圧倒的にスマートフォンだし、今、この中に株主さんにスマホを使っていないヒトがいらっしゃったら、時代に遅れる。いかんと、終わったらすぐにソフトバンクのお店に行かないといかん(笑)。 スマホを始めた際にスマホにはおサイフケータイも何もかも入っていない。それでは無理だと、他社の経営陣も、携帯専門の記者も堂々と書いていた。その人たちは、頭を丸めてほしい。とにかく、ソフトバンクは他社に先駆けて取り組んできました」《スマートフォンに他社に先駆けて力を入れてきたことを強調する孫正義社長。高校生にもすでに広まっている状況を説明する》 孫社長「すでに95%の高校生がスマホをほしがっている。最初はスマホをほしがるのは、機械好きの男性ばかりでしたが、女性や株主の方にも60歳を超えてるかたもいらっしゃるとおもいますが、アイフォーン累計契約に占める50歳以上の比率も11%になり、誰もがスマホを使う時代になりました」 《続いて、iPad(アイパッド)の重要性を強調する》 「スマホを持ってるけどiPadを持ってないという人は、時代の先を読むためにもぜひご検討いただきたい。これも一気に伸びていきます。体験もせずにいらないと言ってる人は体験してから言っていただきたい。パソコンのほとんどがパッドに置き換わる時代は必ず来ます。パッドも先駆者として他社よりもシェアを圧倒的にとった。法人契約も倍増しています」 《ANAでアイパッドが導入されている状況がビデオで説明される》 「機長やCAの方が持っていた重いパソコンにアイパッドが置き換わっています」 「ソフトバンク社員の全員がアイフォーンとアイパッドを持っています。アップルよりも早かったんではないかと思います。さらに今年4月にはペーパーレス宣言をしました。社内の業務では紙禁止にしました。コストも下がり、経営のスピードも速まりました」《続いて、さらなるスマホなどによるデータ通信収入をどう増やしていくかを説明する》 「日本の人口のほぼ全てに行き渡った携帯ですが、ほんとにそうなのか。パソコンを使っている人がいまは大半だと思いますが、ヤフーBBを始めたときはネットを使ってる人も少なかった。同じように、スマホとスマートパッドを両方持つ時代が来る。エアコン、洗濯機、冷蔵庫、車にすべて通信回線が入っていく。マシントゥマシン(M2M)になる。M2Mは20年度には現在の10倍の4652万台になる。市場はまだ成熟していない。いまから始まる。 たとえば、ホンダさんのカーナビには、去年3月から私どもの通信回線が内蔵されました。他社に先駆けて、自動車のカーナビに導入されました。衛星回線に続いてモバイル回線の通信チップが入っています。渋滞度合いがより正確に把握し、運転しているすぐそばのドライブインには牛丼が売り出し中ですとか、ディズニーランドのキャンペーンがすぐにわかるとかのサービスができる。さらに、車のセンサーにもつながっていって、どこかおかしいときには、ガソリンスタンドなどに行ける。さらに先月、東京ガスのガスメーターに通信モジュールが入りました。1人複数回線の時代が来ます。携帯電話の1人1台行き渡っただけではない。モバイルインターネットは今から始まるんだと。第1幕が始まったんだと」 《データ通信強化の基盤となる、ネットワーク基地局の強化について強調する》「他社さんは最近、データ通信の増大で基地局が故障し、総務省から行政指導を受けてますが、なぜかうちだけは呼び出しが来ていません。1回も受けなかった。総務省の人も不思議がってた。『ソフトバンクはなんか隠してないか』とか言われたが、その秘密は、基地局を買収後に10倍にしたからです。電波が届かないから増やす。それに加え、スマホの時代が来てデータ通信料が爆発的に増えて、情報量がさばけなくなるということで、先行してここ2、3年は基地局を増やしてきました。他社は電波がつながるからということで、基地局を増やしてこなかった。他社は事故を起こすほどの混雑に何度もなってしまった。 さらに、バイパス道路のために、公衆Wi-Fi(ワイファイ)スポットを増やしました。銀座でも渋谷でもワイファイだらけにしました。ドコモさんの社長はワイファイスポットはいらないんだと言うことで9500カ所ですが、うちは26万カ所。ドコモさんは2、3日前にワイファイスポットを増やすんだと方針を変えられました。バイパスする手段はワイファイスポットを増やすのが有効だということを経営陣が認識した。我々はそれに先行した。 モバイルインターネットの時代が来ると、スピードが重要です。他の2社に比べて、2、3倍の速度が出せるようになりました。それでも、ソフトバンクの電波は届かないと言われてましたが、唯一最大の解決策は、プラチナバンドを持つということで、我々は一切なかったんですが、今年の2月に認可をいただいた。来月7月25日から一般常識の4倍の速度で基地局を工事しています。日本中に広げていきます。何が良いのかというと、アイフォーンだと、今回のプラチナバンドで電波が届く範囲が3倍に増えるんです。届きにくい範囲が一気に解決です。今までの2・1ギガの電波は建物に跳ね返されてしまい届かない。プラチナバンドだとビルに回り込んで届くんです。電波に粘りが出てきて回り込んでいき、建物内にも届きやすくなる。ということで、ビル陰の中に届きます。地下鉄の入口にも届きやすくなる。郊外の山の森の陰にもはるかに届きやすくなる。これを使うためには、携帯端末にプラチナバンドのアンテナや受信するチップが必要。夏からの全機種に入っていきます。アイフォーンにはチップが入らないかと危うかったんですが、総務省に怒鳴り込んでいって、国際バンドに合わせることになって、アイフォーン4と4Sはプラチナバンドを受けられることになっています」 《さらに、スマホのコンテンツの強化について、ヤフージャパンの今後の展開を中心に説明していく》 「ヤフーがさらにスマホの時代に向かって、経営陣も若返りました。井上前社長ががんばってくれましたが、平均年齢40歳ぐらいの経営陣がやっていきます。彼らのスローガンはスマホファースト。これからはスマホを先にやっていく。アイフォーンが出て以来、スマホユーザーの利用度合いも160倍になりました」《孫正義社長は、経営方針の説明を続ける》 孫社長「通信設備はデータ通信量の増大に耐える規模、設計に変えていく。コンテンツも強化していく。『モバイルインターネットNo.1』になりたい。そして2016年度には営業利益1兆円を目指す。これは具体的な戦略に基づいた目標で、モバイルがカギとなる。他社の営業利益は6年ほど横ばいだが、今回、一気にKDDIを超えた。今のドコモの営業利益は数年で追い抜く。そしてNTTも抜く。これがわれわれのの成長戦略です」 《孫社長はさらに、再生可能エネルギーへの取り組みと震災対応について話し始めた》 「再生可能エネルギーは固定価格買い取り制度が7月1日に始まるので、第1号はこの日から運転開始する。京都と、群馬で始めます。全国で200メガワットを超える発電をする。先進的事例を作るという意気込みで行っています。本業ではありませんので、連結業績への影響は金額的には軽微です。志が大事と思って取り組んでいる。また震災対応では、来月の夏休みに被災地の高校生300人を招いて海外留学を支援する。私の母校のカリフォルニア大バークレー校に招待する。痛ましい事故に対して、ささやかな気持ちで支援をさせていただく」 《一昨年に掲げた成長ビジョンの進捗にも話は及んだ》 「私が引退したあと、『新30年ビジョン』が実現する頃には、5000社のグループにするという大風呂敷を広げている。一昨年は前800社。これが2年で960社に増えた。5000社には遠いが、予定しているより早いピッチで進んでいます」「ではなぜ情報革命にこだわるか。世界の産業は著しく変わっている。まだ日本の政治家は、『もの作りニッポン』にプライドと将来の基本的戦略をかけているが、私は間違っていると断言する。時代は進展するから。完全に自動車、家電などの機器。工業製品の世界の全部の会社の時価総額を足したものが情報通信業界は2倍になった。大きなトレンドを見誤らないでほしい。情報革命から取り残されると後進国になってしまいます。社会全体が進化さしていかないといけない。知恵と知識の武装をしないといけない。インターネット経済の規模は現在の270兆円からさらに増えていく」 《次のテーマは『株主価値の最大化』だ》 「ネットバブルがはじけた直後、この部屋(会場)で年配の女性株主から話があった。『退職金のすべてをソフトバンク株に使った。亡くなった夫のものだったが、株価は10分の1になった。頑張ってほしい』と。株価はネットバブル崩壊で100分の1に減った。非難ごうごうの中、この株主が発言し、私は涙を流した。涙と拍手で頑張れといわれた。このとき多くの株主に対して誓った。必ずいつか我々の株、時価総額を超えてみせると誓った。何としてもそれを実現させたい。新30年ビジョン。株式の時価総額を200兆円にする。ピークの株価を上回るようにしたいという志を語った。上場時は2000億円の時価総額。世界のトップ10になりたい。100年前は鉄の会社が世界のトップ10。30年前はIBMやAT&Tなど。直近ではアップルが世界第1位になっている。最も必要とされる会社が世界のトップ10に入っている。ソフトバンクの経営は株価のためや、利益を上げるためではなく、世界の人々から最も必要とされる企業となりたいためだ。このために創業し経営している。その志を一緒にリスクを取りながら支えてもらっている株主に喜んでもらえるように業績を立派に上げていきたい。配当を増やせ、株価を上げろというのが本音かもしれない。やります。それに向かって経営します」 《そして孫社長は、先日発表した、世界初の放射線測定機能付きスマートフォンを紹介する》 「1年前、悲しい出来事がありました。多くの国民が嘆いた。ソフトバンクの本業とはなんぞや、ということで悩んだ。自分の子供の未来を心配する国であってはいけないと思います。本業のささやかな1つの製品として、放射線測定機能のついたスマホを世界で初めて開発し、今日から予約を受け付けます。発売は来月の中旬です。こんな機能のついたスマホがでること自体が嘆かわしいが、我が子を心配する母親の心配、不安を少しでも和らげるためにこういう機能を作ってみた。多くの人々の笑顔がみたい。情報革命で人々を幸せに。これが我々の本業であります」 《ここで、全世界が情報通信でつながる、とする『情報革命』についてのイメージビデオが流れる。そして孫社長は最後に語りかけた》 「何としても人々の幸せのために情報革命を続けていきたい。説明に時間がかかりましたが、株主を最も大事にする経営者のウォーレン・バフェットは丸1日かけて総会をやります。以上、今後の経営方針について説明させていただきました」《約1時間30分の孫正義社長の説明が終わり、ようやく株主からの質問に移る》 孫社長「応援演説もありがたいんですが、なるべく短めにお願いします。ご発言いかがでしょうか」 男性株主「尊敬する孫様とお話できるということでうかがいました。創業当時から最も苦労したのはなんでしょうか」 孫社長「なんと言ってもヤフーBBを始めたときでした。朝も昼も夜も土日もない、ゴルフも封印して、毎晩夜の2、3時まで仕事して、夏休みも正月もなく、集中して仕事をしました。どん底の大赤字1000億円を超える規模でした。ただ、精神的にはこのときでなくて、創業間もないとき私が肝臓をわずらって、肝硬変直前まで行って、病院に出たり入ったりを3年ぐらいして、まだ20歳代でしたが余命は5年ぐらいだろうといわれ、志半ばで、自分の命が持たないかもしれない。そのときが一番苦しかったですね。そのときは病気を治すのが第一義でした。乗り越えられたのは家族と社員と多くのお客の笑顔が見たいという気持ちと、もちろん私の主治医です。拾った命なので精いっぱいがんばります」 《続いて、ソフトバンクの成長戦略について男性株主が質問する》 男性株主「モバイルインターネットナンバーワンとアジアインターネットナンバーワンとおっしゃってました。現在960社という投資をされた会社が、上場したときの評価額が今後評価されてくると思うが、利益としての株価に与える影響が見えにくい。わかりやすく説明していただきたい」孫社長「持ち株に相当するのが1・7兆円、時価総額が3兆円程度ですから、残り1・3兆円が通信を中心に利益を出しているところ。経営のスタイルとしては、ウォーレンバフェットのバークシャーハサウェイがモデルだと思ってます。保険会社というキャッシュフローの会社を左手に、右手に、コカ・コーラとかの株を持っている。われわれもIT業界のバフェットだというのがイメージ。キャッシュフローとしてもモバイル事業、さらにインターネット会社の株を持っていこうと。上がったり下がったりしますが、車の両輪としてこれからもやっていこうと」 《総会の冒頭、マイク無しで発言しようとした株主が発言し始める》 男性株主「応援演説を2、3分読み上げます。深く敬愛しているところであります。地球上の政治家は軍備に奔走しており、孫先生にはほんの2、3%安全な地球にするために力を入れていただきたい。そこで、会社株主の皆様の躍進のため、孫先生に総会終了後ごあいさつ申し上げます」 孫社長「おっしゃるとおり、私も本業では、多くの皆さんの幸せのために情報革命をするということでがんばります。いま被災者の方に、少しでもお役に立ちたいと思い、これからもがんばります」 《放射能測定機能付きの携帯を発売することを称賛する男性株主が質問する》男性株主「専門家が言うには地震予知は1週間前にできるということだ。ソフトバンクの携帯にもその機能を」 孫社長「ぜひ参考にさせていただきます」 《注目が集まっているエネルギー事業についての質問を男性株主を行う》 男性株主「ソーラーパネル設置という話でしたが、ソーラーパネル以外に節電への取り組みは」 「去年夏は、ピーク時の節電から40数%できました。自然エネルギーへの取り組みとしては、太陽光につづいて、風力発電、これを具体的に準備中です。ただ、本業じゃないので、日本を救うほどはできないが、いくつか事例を作っていきたい」 《さらにエネルギー関連の質問。孫社長が提唱するゴビ砂漠の太陽光発電や地熱発電などの自然エネルギー発電でアジア各地がエネルギーを供給しあうという『アジアスーパーグリッド構想』について、男性株主が質問する》 男性株主「政府と一緒にやっていかなくては無理ではないか」 孫社長「いまの段階ではクレイジーなアイデアで、事業計画はできていない。ただ、何事も『空を飛びたい』とかのビジョンがあって物事が始まると思ってる。今の段階ではジャストクレイジーアイデア。もしかしたら一緒に担ごうかという大企業が、名乗りをあげてくれそうな進展があってる。われわれ1社でできることでないのは認識してるので、大企業が一緒に応援してくれて、各国政府が志を分かち合ってくれた場合に初めて成り立つ。本業の合間に、こちらについても勉強中ということです」《株主優待への要望も飛び出した》 女性株主「株主優待についてですが、よくわからないので使っていません。お父さんグッズの株主専用バーションを作って、通常版と選べるようにしてください」 孫社長「やりましょう」 男性株主「新30年ビジョンについて。2年前にこのビジョンを発表したときとは環境が異なっている。プラチナバンドの認可を得て、有利子負債も減らすなどしている。当時、保険として『大ボラ』といったと思うが、今それはどうなっていますか」 孫社長「まだまだ大ボラです。実現できるときは、私はこの世にいない可能性が高いというくらいの時期かもしれない。1人で実現できることではなく、ソフトバンクグループ、後継者へのバトンタッチも含めやっていきたい。現役でソフトバンクを引っ張るのは60代までと心に決めている。立派な経営陣に引き継ぐために(次世代育成の)『ソフトバンクアカデミア』も立ち上げている。後継者を育てながら、一丸となってやっていきたい。私がやっている間は、言い訳なしにそこに向かって突き進む。そういう意味での自信はある」男性株主「太陽光発電は、昨年は200メガワットということだが、今後の展望について分かる範囲で報告してほしい。民主党政権は脱原発だったが、大飯原発を再稼働し、各地の休止している原発も再開しようとしているのではと心配している。そこで孫社長の実行力、先見性を一企業ではなく、60代で政治の世界に、行き詰まった状況を突破するために転身を図ってもらうことを頭の片隅に入れておいてほしい」 孫社長「私は事業家で人生を終えるつもりでソフトバンクを創業しました。国民の1人として、原発の件は憂慮している。力不足だが、少しでも再生可能エネルギーなど事例を示し、灯りの一端になればと。政界に出るほどの力はないが、一国民として本業を通じて頑張り、ときどきツイッターやフェイスブックでぶちまけたりして頑張っていきたい。皆さんの気持ちはわかる。ありがとうございます」 《質問はさらに続く》 男性株主「(米アップルの基本ソフトの最新版である)『iOS6』が発表された。注目している機能はありますか」 孫社長「(音声認識機能の)Siri(シリ)はすばらしい。スティーブ・ジョブズが残した、人類の発展の事例の1つがあそこにある。スタートしたばかりだが、多くの製品、サービスにインパクトを与えるのではないかと思います」男性株主「震災のときの個人としての寄付、関連の展開に敬服します。他方で、株主にしてみれば損害の金額は震災の金額を上回っているかもしれない。時価総額の最大化というより、株主価値の最大化という観点でお願いしたい。自社株買いの拡大など。分割によって実質的な増配につながることを考えてほしい。ショップスタッフの外国人への対応が悪い。分かっていない。ある友人は10数万円の請求がきて非常に怒っている」 孫社長「私も心を痛めるような指摘。日々現場改善の努力をしているが、今の言葉を受け止めてさらに改善を進めていきたいと思います」 男性株主「配当大幅増でありがとうございました。2倍、3倍を期待しています。孫さんは海外にも目を向けている、中国、インドに提携先があると思う。その現状と今後の見通しについて教えて頂きたい」 孫社長「中国でのグループ会社の業績がうなぎ登りに上がっている。グループ会社も増えている。インドでもインターネットグループ会社が続々とできつつある。ほかにもシンガポール始めアジアでの展開を加速している。チャンスを見極めながら着実に進めていきたい。国内の人口が減少するだろう、高齢化社会になるだろうという市場にこだわるのではなく、しっかりと海外も広げていきたい」 《ここで孫社長は質問を切り、決議条項の採決に入る。議案は配当に関するもの1件で、過半数の賛成で承認可決した。総会は開始から約2時間半後の午後0時33分に終了。来場者は昨年より245人多い2039人だった》《その後、ヤフー社長を退任し、ソフトバンクの取締役も辞任した井上雅博氏が、あいさつに立った》 井上氏「以前株主総会で話したときに、ソフトバンクの子会社でも重要なヤフーの成長を通じてソフトバンクの成長に貢献したいと発言した。先日ヤフーの株主総会があり、若い世代に次のヤフーの成長を託しました。そしてソフトバンクの方も退任します。仕事人生の長い期間を孫社長と過ごし、いいチャンスを与えてもらったと感謝をしているところです。インターネットはずいぶん成長した。この過程に携われてよかった。特に孫社長と一緒にやったヤフーBBでは、NTTに独占されていたデータ通信について、世界でも恥ずかしくないインターネット環境に作り上げられた。モバイルのインターネットもそう。僕1人ではできなかった。孫社長の高い志、リーダーシップがないとできなかった大仕事ができて感謝している。これからはややゆったりさせてもらいます。今日からはヤフー、ソフトバンクの一利用者、一株主としてソフトバンクの発展を応援していきたい」 孫社長「15、16期連続の増収増益という記録を作り、日本の最大のインターネット会社を作り上げた井上君。大変高く評価し、深く感謝をしている。もう少し取締役を続けてほしいと頼み込んだが、ハワイで遊びたいなどというもので。リラックスしたいということでした。若い経営陣にバトンを渡す以上すがすがしくということでしょう。気持ちよく感謝とともに送り出したいと思います。本当にありがとう」 《その後ソフトバンクの“思い”を込めたビデオが流れた。最後は『情報革命で人々に幸せを』のメッセージで締めくくった》

まったり日記 4

のんちゃんが2005年(大学2年生)から始めた「まったり日記」。いろいろ名前も変わりましたが再度日記を書いています。